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市民医療講演会のお知らせ (入場無料。お気軽にお越し下さい。)

「がんと認知症 その診断と治療の最前線<終了> 平成19年4月28日(土) 14:00〜
宝山ホール(県文化センター)
「がん診断と放射線医療の最前線」<終了>
〜PET/CTの有用性と4次元ピンポイント照射によるがん治療〜
平成19年3月31日(土) 14:10〜
人吉市カルチャーパレス 大ホール
主催・お問い合わせ先; 厚地記念放射線医学研究所 TEL 099-226-8871   詳しくはこちら




平成18年3月3日の読売新聞の記事・平成18年5月24日9:20〜NHKの番組について


獨協医科大学病院 PETセンター長 村上康二先生の見解
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/PET/news002.html


当院院長 陣之内の見解

平成18年3月3日、読売新聞夕刊の1面トップに掲載された記事について、全国に渡りさまざまな波紋が広がっていますが、私の所感を述べたいと思います。

 結論から言えば、一般の人に誤解を与える極めて問題のある記事でした。この誤解をどのように解いていくのか、私たちに与えられた課題は大きいものがあります。


 まず、問題の記事を見てみましょう(図1)。大きなタイトルで『PETがん検診に「?」』とあり、「国立がんセンター内部調査」「85%を見抜けず、早 期発見切り札のはずが...」と続いています。表題しか読まない人は、PETがん検診は見逃しが多く役に立たないと理解してしまうでしょう。記者は、イン パクトの大きい記事を書けると意気込んだことが伺えます。

 私はこの記事の内容もさることながら、1面トップという扱いと見出しが過激な点に憤りを覚え、下記の如き抗議文を読売新聞HP(読売オンライン)に送りました。





読売新聞社 医療情報部  石塚記者殿 平成18年3月7日

PET検査施設で働くPET専門医、核医学専門医として御意見申し上げます。
がんセンターのデータの内容、解釈、そのほかの問題点については、別の人に譲ります。

私が問題と考えるのは次の2点です。

1. タイトルが過激で「PETでは癌の85%を見逃し、15%しか分からない」という誤解を生じる。
2. そのことにより、PETという癌の診断に極めて有用な検査の普及の障害となる。

@. 検診の機会を逸する可能性。

 全国のPET検診を行っている施設では、PETの限界を踏まえ、核医学会のガイドラインに沿って検診を行っており、PET単独での検診は限られています。
 記事ではそのことに触れておらず、あたかも全国で行われているPET検診が多くの癌を見逃しているかのように誤解されます。
 実際は、他の検査も含めた総合検診で行われることが多く、たくさんの方の癌が発見され、命を救われています。
 こうした早期発見される可能性のある方たちが、この記事を見て誤解し検診をやめてしまう恐れがあります。つまり、癌の早期発見の機会を逃してしまう懸念があります。

A. 検診ではなく診療(癌の診断)のレベルを低下させてしまう可能性。
 PETが癌の診断に有用で、いくつかの癌ではPETをしないまま治療方針を決めた場合、誤った治療法を選択する危険性があります。例えば、肺癌などでは PETにより思わぬ転移が見つかる確率が20%程度といわれています。つまり、手術適応例が適応外になるわけです。
 今回の記事により、癌の患者さんはもとより、核医学専門医や放射線科以外のPETの有用性をよく理解していない医師たちが、PETは役立たないという認 識を持ってしまった場合、治療前にすべきPET検査をしないケースも起こりえます。すなわち、医療レベルの低下が引き起こされ、ひいては患者さん、国民全 体の不利益となるのです。

B. 上記二つのことは、誤解を生ずるような医療記事を紙面に出したことにより、「適切な医療を受ける機会を奪われてしまった」と訴訟の対象になるかもしれません。
 読売新聞社医療情報部の記者の方は、がんセンターのデータの数字だけを見て、「PETが役立つといわれていたが、実際はこんなに見逃しがあるのだ」というインパクトのある記事が書けると思われたのかもしれません。

 しかし、この記事は、我々PETの専門家・核医学専門医が、長年にわたりPETの有用性を説いて広く普及するようにしてきた努力を、無に帰する懸念すら あります。特に、一般の人向けの記事を書く場合には、PET臨床の実態と有用性を理解された上で、誤解の生じないよう適切な内容とタイトルにすることが、 マスコミとしての義務ではないでしょうか。

 出来れば、今後、公正を期す意味で、「PETが、がんの検診にいかに役立っているか」といったルポ風の記事を出して頂くことを望みます。もしそのような 追加の報道がなければ、この記事は日本の癌診療のレベルを低下させた、極めて問題のある記事として残ることになるでしょう。
どうぞ、我々、現場の医師の意見を御理解の上、適切な対処をお願いいたします。



 最も言いたかったことは、「PETは役立たないという誤解が広がり、臨床に役立つPET検査の機会を逸する人たちが生じてしまう懸念がある。よって、PETの有用性のルポ記事を出して欲しい」とうことでした。残念ながら、3月21日現在、全く反応はありません。

 また3月6日にもやや詳しい関連記事も載りました(図2)。こちらは連載記事の一つですが、中の図が問題です。PETがん検診ガイドラインから抜粋し、イラストを作成したようです。

 各臓器に×がたくさんついています。タイトルは「がんの種類別のPET検診の有効性」とありますが、一般の人が見た場合には、がんの診断に役立たないと 勘違いしてしまうでしょう。PETを良く理解していない画像診断医以外の他科の臨床医もそのように思い込むかもしれません。

 上記と同じ問題が生じてくることが懸念されます。



 がんセンター がん予防・検診研究センターの先生方も、記事および生じた波紋について、大変困惑されたものと思います。3月14日、がんセンターの見解がHPに出されま したhttp://www.ncc.go.jp/jp/information/kenkai.html(当該ページは削除されていましたので、キャッ シュを表示いたします。)。内容は、取材を受ける医師側の立場、PET専門医の立場として至極もっともなもので、読売新聞側に強く抗議してもらいたいとこ ろでした。しかし、残念ながらがんセンターとして正式な抗議はなされなかったようです。

 ところで、この見解について別の新聞記者の経験のある方から、がんセンターのコメントについて次のような意見を聞きました。

1.「記事原稿を掲載前に見せる約束が守られなかった。」
 →そういう約束をすることはない。
  まず、そういう約束はしないのが、新聞の常識。
  今回、どういうやり取りがあったか分からないが、がんセンターの言い分は通らない。

2.「PET検診を否定する見解をとってはいない」
 →記者とのやり取りの中で、そういう意味に取られる発言をしている可能性があり、記者側はテープを取っているので現実的には反論はできない。データの取捨、記事内容は記者側の専権事項。

3.「内部調査」
 →に意味はない。一般には、悪い事項を調査し隠しているように思われるような言葉であるが、実際、がんセンターの内部の調査(検査、解析)であることに は間違いない。よって、なんら争点にならない。尤も、誤解を与えることを想定しているのかもしれないが。

4.「データは中間的・予備的なもの」
 →記者に渡した時点で、公表したものと考えなくてはならない。

以上から、今回の記事について読売が訂正記事を出すことはありえない。

 この意見を聞いて、私は愕然としました。新聞記者がある意図を持って記事を書こうとすれば、このような取材をされ記事を書かれてしまうことになるわけです。

 今後、われわれ医師の側が取材を受ける際の注意点も教えてもらいました。新聞はじめマスコミ取材を受ける際に、留意しておく事柄として重要と思いますので、列記したいと思います。


@ 記事原稿を事前には見ることは出来ないという前提で取材を受けること。
識者としてのコメントが載る場合には、そこの部分だけは見ることが出来るので、要求すること。
A 1人ではなく、事務官や広報担当者と一緒に取材を受けること。
B こちらもテープを取ること。
C 記事に書いて欲しいこと、強調して欲しいことは列挙して必ず書くように要求し、「はい」と確約を取ること。できれば、書面にしておくこと。


 念のため申し添えますが、コメントしてもらった元記者の方も、読売新聞記事のインパクトは重大で、PETの弱点を一方的に強調した問題のあるものであることは言うまでもないという意見です。

 新聞の紙面作りの問題について、編成部(整理部)がタイトルをつけるので地域によって紙面が違ってくることも分かりました。大阪本社版では『PETがん 検診 過信禁物 発見15%止まり』となっています(左図)。こちらではPET過信に注意を喚起するという意味で、まだ許せる気がします。東京版は、85%も見 逃されるというマイナスのインパクトが強く前面に出ています。同じ記事内容でも見出しによって受ける印象が大きく違います。

 記事の内容もさることながら見出しについて、誤解を生じないようなものにしてもらいたいものです。 










  最後に、上記の記事から10日後(3月14日付)に夕刊フジに出た後追い記事を紹介します。がん予防・検診研究センター長の森山先生にインタビューしたもので、読売新聞記事に対する反論記事になっています。タイトルは「他の検査とあわせれば効果絶大」とあり、中見出しには「”見落とし分”も要治療か疑 問」、「胃がんは内視鏡の方が精度高い」と、PET検査の有用性や限界についてフェアな立場から書かれています。やはり、専門家の意見を正確に反映できればこのような意義のある記事ができるという好例と思います。

 こういう形で読売新聞に載っていれば、全く異なるインパクトがあっただろうにと悔やまれます。尤もその内容なら1面トップになることはなかったでしょうが。

 いずれにしても、今後、マスコミに対しては正確な記事を書いてもらえるよう、われわれも対応に注意したいものです。

(平成18年3月21日)

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